『阿弥陀堂だより』

南木佳士さん著『阿弥陀堂だより』を読んで
南木佳士さんの著作を読んだのはこれで三冊目ですが、ますますこの人のことが好きになってしまいました。この作品には作家として、医者として、また心を病んだことなどのご自身の経験が色濃く映し出されているような印象を受けました。非常にシンプルではありますが、心に残る小説です。はじめて南木さんの本を読まれる方は、この本がいいかもしれません。

■それから、小泉堯史監督同名映画も見ました。
映画「阿弥陀堂だより」をDVDでみました。
制作は2002年ですから、それほど古くはないですね。
主な配役は、寺尾聰樋口可南子北林谷栄小西真奈美です。
映画は、小説の大事な後半部分から描かれていました。テンポがゆっくりで、舞台かドキュメンタリーに近いような印象です。長野県の山々や千曲川など田舎の田園風景を混ぜ合わせながらきれいな映像とともに描かれています。原作の趣旨をそらさずに、小泉監督が映画としてうまく脚色していることが伺えました。作品の作り方としては大変地味で、今どきの映画の作り方としては逆向しているようにも思えます。監督ご自身もインタビューの中で述べていますが、人の感覚にうったえるような映画です。
映画を見てから、DVDにはいっている監督のインタビューをききました。この作品は「雨あがる」に続いて監督として2作目なんですね。お話の中から、黒沢監督の影響を受けていること、南木佳士さんの著作をかなり読まれていることを知りました。映画の作り方、映画「阿弥陀堂だより」に対しての思いなどをきいていて、なんだかこの人も好きになりました。小泉監督の次の映画を楽しみにしたいと思います。
また、映画の制作発表インタビューもみました。
「おうめばあさん」を演じる北林谷栄という方は当時90歳で、インタビューのなかで「おそらくこれが最後になるかもしれない」といっておられましたが、非常に味のある演技でした。「トトロ」にでてくるおばあさんの声もこの方です。
この作品で9年ぶりの映画出演となった樋口可南子さんは、原作と台本を読まれてこのように述べておられます。
「自分の中にこんな感動があったなんて・・・新鮮な感動を覚えました・・・なつかしいものに出会えたような・・・こんな感動もあるじゃない・・・忘れかけたものを思い出させてくれたような・・・」