南木佳士さん著『ダイヤモンドダスト』を読んで

最近友人の紹介でこの本を読みましたが、久しぶりにどこか自分の感覚に合った作家にあえた感じがしました。南木さんは医者という仕事を通じて小説をかかれています。そしてその作品の多くが自らかかわった患者さん、「逝く人々」を描いています。私は南木さんの小説を読みながら、自分の入院生活を思い出しました。入院生活もそろそろ終わるという頃、私のストレスは絶頂にさしかかっていました。ちょうどその時、同じ部屋にはなぜか(私は整形外科にかかっているのに)がんの患者さんと、糖尿病の発覚が遅れて両足の指を切断する手術をするという方がいて病室は重苦しい雰囲気だったのですが、私はそういった方々に関心を寄せる余裕などまったくありませんでした。南木さんは末期癌患者300人近くの死を看取り、ご自分の精神状態が悪化するということになったわけです。小説を読んでいると南木さんの患者さんに対するやさしさや、繊細でどこか弱々しいところやたよりなさを感じました。その弱々しさは私自身にも通じるところがありそうだと思ってしまうのですが、300人の死を看取るエネルギーはとうてい私にはないと思いました。これから少しずつその他の作品も読んでみるつもりです。